【動画】IT人材、欧米と争奪戦 獲得へ待遇、やりがい必要<山陰・インド交流 新時代(中)>
2025/10/30

ジャパンメラの会場で打ち合わせをする東亜ソフトウェアのインド人社員。AIを使ったキノコの生産管理システムの開発を手がけ、インド展開の原動力となっている=インド南部・ケララ州コチ市
10月中旬、インド南部・ケララ州のコチ市で開かれた日印の企業による産業イベント「ジャパンメラ(日本祭り)」。会場のホテルには日本語や英語、同州の公用語マラヤーラム語などが飛び交い、企業関係者が活発に商談を繰り広げた。
中海・宍道湖・大山圏域の企業などでつくる訪印団の一員として、イベントに参加したシステム開発の東亜ソフトウェア(米子市新開7丁目)は人工知能(AI)を活用したキノコの生産管理システムを出展して売り込んだ。
システムは、AI技術を専攻するインド人学生を2021年に採用したのが開発のきっかけになった。菌の植え付けや散水といった各工程の最適なタイミングをデータから割り出し、安定出荷につなげられる機能がある。
同社(従業員約30人)は現在、インド人技術者8人を雇用しており、IT開発の知識や経験に加え、同国での人脈を頼りに販促していく計画だ。
就業体験や留学
インドは人口約14億4千万人の半数以上が30歳未満で、長期的に労働力の拡大が見込める「人口ボーナス期」が続く。多民族国家の同国では地域言語のほか、ヒンディー語や英語の3言語を使える人が多く、海外就業を志す若者も少なくない。
人口減少が進む中で、インドとの交流を通じて経済活性化を目指す中海・宍道湖・大山圏域の官民団体は15年、ケララ州側と経済交流協定を締結。海外企業の誘致などでIT大国となったインドの人材を得ようと、就業体験や留学で計70人を受け入れてきた。そのうち17人が東亜ソフトウェアを含む同圏域のIT企業6社に就職した。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及による技術者不足を受け、システム開発のテクノプロジェクト(松江市学園南2丁目)は25年に就業体験を2回実施し、インド人2人程度を採用する計画だ。藤見昌延取締役は「日本人社員の刺激になって、社業にプラスに働くはずだ」と期待する。
日本との賃金格差
しかし、インドに熱視線を送るのは日本だけではない。グーグル社の最高経営責任者(CEO)らを輩出し「インドの頭脳」と称されるインド工科大。同大の不合格者をマサチューセッツ工科大(MIT)など欧米の名門大が奨学金支給で勧誘する動きさえあるという。
国際労働機関(ILO)の調査などによると、IT技術者の24年時点の平均年収(1ドル150円換算)は、日本の450万円に対し、米国1410万円、スイス1560万円などと大きな開きがある。IT企業への就業を目指すインドの若者たちは同じ英語を使い、高賃金の欧米企業を選ぶ傾向が強いという。さらに日本国内でも首都圏は高く、地方は低い状況にある。
15年の経済交流協定締結以降、山陰とインドとの人材交流は徐々に拡大してきた。ただ、同国の高度人材に対する内外の獲得競争が激化する中、今後も選ばれ続けるには日本語教育や生活支援は無論、「スペシャリスト」として活躍してもらうための待遇や責任ある仕事を任せるといった強い動機づけが必要になる。
東亜ソフトウェアの岩西俊哉取締役常務執行役員は「インド人は目的意識が高く、キャリア向上にも貪欲だ。プライドが高く、やりがいのある仕事が用意できなければ、簡単に転籍してしまう」と指摘する。年間2カ月間、母国にいながらテレワークで働ける勤務制度などを整えても過去に辞めた人物がいるとし、「異国の文化を受け入れる柔軟な思考と相応の覚悟がいる」とした。山陰に来るインド人材をいかに増やし、定着してもらうのか。各社の模索が続く。